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甲府地方裁判所 昭和28年(行)14号 判決

原告 内藤藤雄

被告 山梨県知事

補助参加人 功刀貞

主文

被告が昭和二十八年十一月二十一日附を以てなした山梨県北巨摩郡神山村北宮地第四十四番田六畝十一歩及び同所第九十四番の一田一畝十歩に対する譲渡人内藤順蔵、譲受人功刀貞間の昭和二十一年十二月一日附贈与契約に因る所有権移転の許可処分はこれを取消す。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分しその一を被告、その余を原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は被告が昭和二十八年十一月二十一日附を以て為した別紙目録記載の各土地に対する譲渡人内藤順蔵、譲受人功刀貞間の昭和二十一年十二月一日附贈与契約に因る所有権移転の許可処分はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めその請求原因として参加人功刀貞は昭和二十一年十二月一日亡内藤順蔵より別紙目録記載の各土地の贈与を受けたものとして農地法第三条の規定に基き昭和二十八年十一月十八日被告に対し所有権移転の許可を申請し被告は同年十一月二十一日附を以て之を許可する旨の処分をした。しかしながら右許可処分は次に述べる如き理由により違法である。すなわち

(一)  被告は前に参加人が本件と同一理由に基いてなした別紙目録記載の各土地の所有権移転許可申請に対し不許可の処分をしたところ参加人は甲府地方裁判所に右不許可処分取消の訴訟を提起したが被告は原告をして右訴訟に利害関係人として参加せしめる機会を与えなかつたばかりでなく本件許可処分は参加人が昭和二十八年十一月十八日になした申請に対し三日後の同月二十一日に為されたものであつて原告に対しては何等防禦の機会を与うることなく却て参加人を慫慂して許可申請をなさしめたのであるから著しく公正を欠くものである。

(二)  昭和二十一年十二月一日附を以て亡内藤順蔵と参加人間になされた贈与契約はその成立に疑があるため現に内藤順蔵の相続人である原告と参加人間に争があり未だその解決をみていないのである。本件土地の内神山村北宮地第百七十五番田一反二畝十六歩は原告家の他の所有田に比し面積も一番大きく又地質も優つており原告家の飯櫃田といわれるものである。斯のような優良田を亡順蔵において参加人に贈与する筈がなく仮りに贈与したとしても亡順蔵はその妻も、及び娘多喜子に相談することなく従てその同意もなく殆んど秘密裡に贈与したものであつて当時順蔵は中風症を患い病勢昂進中であつたから右贈与は心神喪失までには至らないとしても頭脳混乱の間に行われたものである。参加人はその夫功刀寿与吉と共に二十年余も東京都に居住しており偶々昭和二十年四月戦災の為に疎開して順蔵方の土蔵に居住していた関係に過ぎないのであるから亡順蔵において同人に対し本件土地を贈与しなければならない理由は全然ないのである。農地法第三条に因る所有権移転の許可は当事者双方に争のない場合になさるべきものであつて本件の如き贈与そのものに疑があり紛争中の場合には許可すべきものではない。本件処分は斯る事情を全然無視して為されたものである。

(三)  仮に順蔵と参加人間に贈与契約がなされたとしても右契約は亡順蔵の相続人である原告において取消したものである。

(い)  原告は参加人の訴による贈与契約履行の請求に対し請求棄却の判決を求めて之を拒否し且つ昭和二十七年二月中甲府家庭裁判所の家事調停及び昭和二十八年二月中甲府地方裁判所の農事調停においてもその履行を拒否した。而して右履行の拒否は贈与契約取消の意思表示を含むものであつて本件土地の贈与契約は書面に依てなされたものであるけれども、農地の所有権移転については知事の許可がない限り効力を生じないのであるから右許可以前においては当事者は何時にても之を取消し得べきものである。

(ろ)  仮に前掲履行の拒否が取消の意思表示を含まないとしても原告は昭和二十八年十二月二十日参加人に対し贈与契約取消の意思表示を為し右は同月二十一日参加人に到達した。而して右意思表示は被告の許可処分後に為されたものではあるけれども処分前になし得なかつたのは前述のように被告がその処分に先だち原告に対し何等陳述防禦の機会を与えなかつた不公正な処置に原因するものであつてしかも右処分は未だ確定していないのであるから取消の効力を有するものである。

(四)  農地法第三条第二項第一号に依れば小作地はその小作農又はその世帯員でなければ所有権を取得することはできない。しかるところ別紙目録記載の土地中神山村北宮地第四十四番田六畝十一歩、同所第九十四番の一田一畝十歩の二筆は訴外山形与三郎が現に小作している土地であるから右農地法の規定により同人若くはその世帯員が所有権を取得する場合でなければ所有権移転の許可はできないものである。従て右二筆の土地に対する本件許可処分は同条項に違反する。

(五)  参加人は現在東京都中央区日本橋中州九番地あやめ寮に居住しており功刀尚正と同一世帯を構成していない。しかも右功刀尚正は田二反二畝歩、畑五畝四歩合計二反七畝四歩を耕作しているに過ぎないものである。農地法第三条第二項第五号によれば農地の所有権を取得しようとする者又はその世帯員が現に耕作している農地の面積が山梨県においては三反歩に達しておらなければ所有権移転を許可することができないものとされている。それならば右法定面積を有しない参加人に対して為した許可処分は同条項に違背し違法である。

以上の諸点からみて本件許可処分は違法であり、原告は昭和二十二年二月一日内藤順蔵の死亡に因る相続に依て同人の有した権利義務一切を承継したものであるから本件処分の取消を求めるため本訴請求に及んだ次第であると陳述し尚本件許可処分は参加人功刀貞と原告間の甲府地方裁判所昭和二十六年(ワ)第二六三号不動産引渡請求事件の判決に依り贈与の真実性が明になつたものとしてなされたことは被告の主張するところであつて右判決に対しては原告より控訴の申立を為し更に参加人も本件許可処分のあつたことを理由に控訴を申立て右事件は現に東京高等裁判所に繋属審理中である。斯のように既に裁判所において審理中の事件に関係ある行政処分に対しては訴願を経ることなく直ちに裁判所の審理を仰ぐことが簡便であるから原告は農地法所定の訴願を経ることなく直ちに出訴したものであつて右事由は行政事件訴訟特例法第二条但書にいうその他正当の事由ある場合に該当するものであると述べた。(証拠省略)

被告指定代理人は請求棄却の判決を求め原告主張事実中、被告が原告主張のような処分をしたこと、参加人が被告に対し前になした本件農地の所有権移転の不許可処分取消の訴訟を甲府地方裁判所に提起したこと、並びに別紙目録記載の土地中原告の指摘する二筆の土地を現在山形与三郎が耕作していることはいずれも認める。原告が亡内藤順蔵の権利義務一切を承継した事実は不知、その余の事実は総て争う。農地法第三条に基く農地の権利移転につき許可申請があつた場合に被告知事は同条第二項に牴触する事由の存否につき調査検討してその許否を決定すれば足りるのである。而して参加人は農地法施行規則第二条所定の手続を経て許可申請をしたので被告は右申請書を検討調査したところ参加人は田畑併せて三反二畝二十四歩(内一反二畝二十四歩は同人所有)を耕作しており稼働力も十分で右許可により生産低下を来す虞のないことが認められたばかりでなく右所有地及び耕作地の状況からして農地法第三条第二項第三号第四号の一定面積を超過する場合の禁止規定又同項第五号の一定規準面積以下の禁止規定にも触れるところがなく何れの点からみてもその申請は相当と認められたのでこれが許可を与えたものである。仮りに参加人及びその世帯員である功刀尚正の耕作地中に原告主張の如き権利に基かないものがありこれを除外するとしても尚二反七畝四歩の耕作地があるのであるから農地法施行令第一条第二項の規定により権利取得者の取得後における農地経営が集約的経営をなすものと認められる場合には三反歩を割ることがあつても許可し得ないものではない。而して参加人の農業経営は極めて集約的であることが認められるからこの点につき何等違法は存しない。尚本件許可処分は参加人の第一回の申請については許可しない旨の決定をしたがその後改めて申請がなされたので前掲理由により許可したものであつて被告が右第一回の申請について許可を与えなかつたのは農地法第三条第二項各号の禁止規定に牴触するものと認めたからではなく所有権取得の原因とされる贈与自体につき原告と参加人との間に争があつたので一応不許可としたのである。しかるに本件処分の申請に当つては甲府地方裁判所の判決により贈与の真実性が明かとなつたのでこれを許可したものである。以上の理由により本件処分は適法になされたものであるから取消さるべきものではないと陳述した。(証拠省略)

被告補助参加人訴訟代理人は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として被告が原告主張の如き経過により本件農地につき所有権移転許可処分をした事実は認めるが原告が右処分が違法であると主張する(一)の事由は否認する。本件許可処分は形式上は僅かに三日間でなされているが実際は昭和二十二年以来懸案とされており甲府地方裁判所の判決により亡内藤順蔵と参加人間の贈与契約書の真正な成立が認められたため許可されたものでありその間一ケ年半の長期慎重審議の結果為されたのであるから決して公正を欠くものではない。(二)の事実は否認する。原告功刀貞、被告内藤藤雄間の甲府地方裁判所昭和二十六年(ワ)第二六三号不動産引渡請求事件においては内藤順蔵と参加人間の贈与契約証書が真正に成立したことを推認して目的物件中農地以外の建物の引渡及びその所有権移転手続の請求を正当として認容しているのであるから譲渡人の承継人に異議があつても被告は本件許可につき右異議を裁量する必要は毫末もない。(三)の主張事実中原告がその主張のように贈与契約の履行を拒否したことは認めるが右拒否は贈与契約取消の意思表示を含むものではない。又原告が昭和二十八年十二月二十日参加人に対し贈与取消の意思表示を為しそれが到達した事実は認める。しかし原告は法律上当然先代順蔵の贈与契約上の地位を承継しているのであるからその反対解釈上取消権を有しない。しかも知事の許可処分に対して不服のある場合には訴訟提起による外はないのであつてもはや贈与契約を取消すことはできない。(四)の主張事実中別紙目録記載の農地の内原告の指摘する二筆の土地を現に訴外山形与三郎が耕作していることは認める。しかし右土地は内藤順蔵の生存中その返還を請求し同訴外人の承諾を得たのであるが順蔵の死亡に因り引渡未了となつているものである。(五)の主張事実は否認する。参加人は現在女子三名のみで男子がない為長女の夫尚正を養子として同人等と同居しているのであつて同人と参加人の農地を合せて三反二畝十二歩を保有しており農地法第三条第二項第五号所定の適格を有するものである。而して参加人は夫寿与吉の死後子供二人が東京都内に勤務している関係上時折上京することはあるが神山村に住居を有するものであると陳述した。(証拠省略)

理由

先づ本訴の適否について審査するに農地法第八十五条第一項第一号に依ると同法第三条第一項の処分に不服あるものは農林大臣に訴願することができる旨定められているから右処分の取消変更を求める訴については行政事件訴訟特例法第二条本文に従い先づ訴願を経由しなければならないところ、本件においては原告は右訴願を経由しておらないことを自認している。しかし成立に争のない丙第四号証並びに弁論の全趣旨に依ると本件許可の対象である贈与の効力については参加人対原告間の当庁昭和二十六年(ワ)第二六三号不動産引渡等請求事件において知事の許可のないことを理由に参加人一部敗訴の判決があつたため参加人は改めて本件許可を得て控訴し該事件は目下東京高等裁判所に繋属して審理中であることが認められる。してみれば本件許可の成否は該訴訟事件の運命を左右する関係に在り原告としては右控訴事件の終結迄に本件許可処分の取消を求めなければ時機を失し著しい損害を蒙る結果となるので右事由は正に行政事件訴訟特例法第二条但書に該当するものと認めるのが相当であるから訴願を経由することなく提起された本訴は適法であると解しなければならない。

仍て本案に入るに参加人功刀貞が昭和二十一年十二月一日亡内藤順蔵から別紙目録記載の土地の贈与を受けたものとして農地法第三条の規定に基き昭和二十八年十一月十八日被告に対し所有権移転の許可を申請し被告が同年十一月二十一日附を以て右申請を許可する旨の処分をしたことは当事者間に争のない事実である。そこで右処分に原告主張のような違法事由が存するか否につき順次判断する。

先づ原告の(一)の主張は被告の為した処分はその手続が妥当でないということに帰着しその主張のような事実があつたとしても決して被告の処分自体を違法ならしめるものではないからその理由がない。

次に原告はその(二)において本件のように基本たる所有権移転行為につき疑のある場合には知事は許可処分をなすべきではないと主張するけれども、この主張も亦右のような場合に軽々しく許可を与えることは妥当でないというに帰するのであつて、たとえ移転行為そのものに疑がある場合であつても調査の結果その真実性が認められる場合には之に対し許可を与えることは決して違法ではない。しかも本件においては亡内藤順蔵と参加人間の贈与契約が真実でないと認むべき証拠(証人内藤多喜子成立に争のない甲第四、同第五号証の各二に依ては右事実は認められない)は何等存しないばかりでなく却て成立に争のない丙第四号証、参加人本人の供述に依て成立を認める同第五号証並びに参加人本人の供述に依ると右真実性が肯定せられるから此の点について被告の処分には何等違法は存在しない。

次で(三)の主張について考えてみるに原告は本件農地の贈与は書面に依てなされたものであるけれども農地の所有権移転行為については知事の許可がなければ効力を生じないのであるからその許可以前においては各当事者はこれを取消すことができる旨主張しているが果してそうであろうか、民法第五百五十条が書面に依らざる贈与は未だ履行せざる部分については各当事者これを取消すことを得る旨規定しているのは主として贈与者の意思の明確を期し軽々しく財産権の無償処分を為すことを予防せんとする趣意に外ならないから他面いやしくも贈与者においてその意思を明確にする書面を作成した以上は後日これを取消すことを得ないものと為すことは明かである。而して農地に関してはその所有権移転行為については都道府県知事の許可を受けなければその効力を生じないものとされていることは農地法第三条第一項第四項の規定に依り之亦明かであつてその法意は農地の所有権移転行為が同法の目的とする耕作者の地位の安定、農業生産力の増進を図る上において適当であるか否かを都道府県知事をして審査判定せしめ右目的に添うよう農地の移動を統制監督せんとするものである。従て同条項所定の許可行為は農地の移動に関する一般的統制を特定の場合に解除し適法に一定の事実行為又は法律行為を為すことを得せしめる性質と第三者の法律行為を補充してその法律上の効力を完成せしめる講学上認可と呼ばれる性質とを兼ね有する行政行為であると解するのが相当であつて斯く解してこそ同法が許可を受けないでした行為はその効力を生じないとし且つこれを処罰の対象としている趣旨を了解することができるのである。してみれば右の如く許可を受けないでした行為はその効力を生じないものとされるのは認可的性質に基くものであつて贈与の場合についてみるにこれに対する都道府県知事の許可は当事者間に成立した基本的な合意を補充して所有権移転の法律効果を完成せしめるに過ぎないこととなり合意の方式及び前掲民法第五百五十条の適用については何等の影響を及ぼすものではないから右知事の許可の前後を問はず書面に依らない贈与の場合には各当事者はこれを取消すことが可能であらうし書面に依る贈与の場合には取消し得ないものと結論せざるを得ない。本件許可の対象である贈与が書面に依てなされたものであることは原告の自認する事実であるから他の点について判断する迄もなく以上説示の理由に依り本主張の採用すべからざる所以を了解すべきである。

次に(四)の主張について審査するに別紙目録記載の土地の内山梨県北巨摩郡神山村北宮地第四十四番田六畝十一歩及び同所第九十四番の一田一畝十歩は訴外山形与三郎が現に耕作している農地であることは当事者間に争がなく証人山形与三郎の供述に依ると右二筆の土地は同訴外人の小作地であることが認められる。参加人は右二筆の土地は内藤順蔵の生存中その返還を請求し同訴外人の承諾を得たものであるが順蔵の死亡に依り引渡未了となつているに過ぎないと主張し証人山形与三郎並びに参加人本人の各供述に依ると亡内藤順蔵において昭和二十一年十一月頃小作人である山形与三郎に対し右二筆の土地の返還方を申入れた事実は認められるけれども右申入れに対し山形与三郎がこれを承諾した事実は認られないし他に右二筆の土地につき賃貸借の当事者間に合意解約が成立した事実を認め得る証拠は存在しないから右主張は採用することができない。而して農地法第三条第二項第一号に依ると都道府県知事の許可は小作地又は小作採草放牧地につき小作農及びその世帯員以外の者が所有権を取得しようとする場合にはすることができないと定められている。してみれば右二筆の土地は正に同法条に該当し被告は右小作人の世帯員以外の者である参加人に対し所有権の移転を許可することができないに拘らずこれを許可したのは違法であるから右二筆の土地に対する被告の許可処分はこの点において取消を免れない。

最後に残余二筆の土地に対する関係において(五)の主張について考察してみるに成立に争のない丙第一号証乃至同第三号証、証人秋山福吉、同功刀尚正並びに参加人本人の各供述を綜合すると参加人は昭和二十七年十二月一日娘婿である訴外功刀尚正と養子縁組をなし同人は参加人と同居しその世帯員として生活を一にしており且つ参加人と同訴外人の自小作地併せて田二反二畝八歩神山村北宮地二百六十五番畑二十二歩同所二百六十八番畑二十三歩同所九百八十七番の二畑一畝二十五歩同所千十二番の内畑一畝二十四歩同村鍋山二千六百五十番の二畑五畝歩合計三反二畝十二歩の耕作地を有する事実が認められる。もつとも証人大村三郎並びに原告本人の各供述に依ると右の内鍋山二千六百五十番畑五畝歩は原告の所有であつて原告は昭和二十九年二月頃これを訴外大村友一に売渡しその後同人方において耕作しているが参加人より右売買につき居村農業委員会に異議を申出をしたので同委員会において調査した結果右畑は永年参加人において耕作していたものであつてその耕作権は同人に在るものと認定したが同村内の出来事であるため目下その解決に奔走しているものである事実が認められるけれども右事実に依れば本件許可時である昭和二十八年十一月二十一日当時においては参加人の耕作地であつたことは疑がない。而して農地法第二条の規定の趣旨に依れば同法の適用上耕作地の有無は世帯を単位として定めるものと認められるから参加人は本件許可処分当時においては三反歩以上の耕地を有したこととなり同法第三条第二項第五号所定の許可できない場合には該当しない。仮に右畑の耕作について参加人の権限に疑があり之を除外するとしても同法第三条第二項但書に依り知事は同法施行令第一条第二項の要件を充す限り許可を与えることができるのであつて右畑を除いた前掲耕作地に本件係争の北宮地第九百五十番畑二畝十歩同所第百七十五番田一反二畝十六歩を加えると優に三反歩を超過し証人功刀尚正の供述に依ると同人は専業農家であつて農業に精進する見込があるものと認めることができるから同条項の要件を充すこととなり結局被告の処分には原告主張のような違法は存在しないものと謂はなければならない。

以上の理由に依り被告が昭和二十八年十一月二十一日附を以てなした許可処分中北宮地第四十四番田六畝十一歩及び同所第九十四番の一田一畝十歩については違法としてこれを取消すべきものとしその余の部分については違法は存在しないから原告の請求を棄却することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山孝)

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